会いたくても
たすかる犬 たすける犬
今日は、雨。
山小屋に住む少年は、ひまをもてあましていた。
一緒に住む老絵描きは、そんな少年をつかまえると、雨粒がポトポトとふってくるように、断片的にはなし始めた。
「たすかる犬の話だ...」


子犬は、ぶるっと身を震わせて、水しぶきをつくった。
ふーと息をついた少年は、その子犬に手をふった。

その時、子犬は小さなため池に落ちて、溺れていた。
必死で手足をバタバタさせていた。声にならない音をあげていた。
少年はそれに気付くと、反射的に子犬をつかみあげた。
このさい、子犬は少年の手を噛んだ。

子犬は、水しぶきをあげると、吠えた。吠えまくった。少年に...。
そのあと、子犬は近くの家へ泣きながら帰っていった。
少年は、ふーと息をついて子犬に手をふった。


保健所に行った老犬。

放し飼いで、朝学校までついてくる犬だった。
帰りには、むかえにきてくれる犬だった。
泣いていると、近寄ってくる犬だった。
涙をペロペロなめてくれる犬だった。
たすける犬。

数日後、少年は竹で作ったつり竿を犬の飼い主の老人からもらった。
子犬は、大きくなってもその少年を見かけると吠える。
けれど、保健所に行った老犬はもどらない。


「...この話は、たすける犬の話でもある」
老絵描きはそう言ってから、ウイスキーのふたを開けた。
少年は、くもった窓ガラスにひとさし指をおいた。子犬と、老犬の絵を描こうと...

04/14 18:55 | benメモ
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