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作品No.249「飛んで来たマフラー」
飛んで来たマフラー


(絵)「2007年 毎日原画」より。

(文)1993年の旅、フラグメント(5回目)

 坂を下り、沿岸の小さな町に辿り着くと、もう夕暮れ間近でした。
 ひとしきり、利尻島を眺めると、今夜の寝ぐらを探すことにしました。
 人の気配を避けて、町から離れました。二キロも歩くと、低い灌木が一面に生えた野原に行き着きました。灌木の影に寝ころぶと、僕の姿はあたりから見えなくなり、”うん。ここなら誰の目にもとまらずくつろげる”と思いました。
 町では食料品店が見つからず、食べ物なし。自動販売機で買った飲み物だけでしたが、 ”一晩くらい食わなくたっていいや”と、日が暮れると同時に就寝することにしました。
 疲れていたのか、夜中に一度も目が覚めることなく朝を迎えました。
 朝露で濡れた寝袋にくるまって、”寒いー”と思いながらなかなか起き上がれませんでした。すると仰向けに寝た僕の顔の上を、”ザザッツ”と何かが走ったのです。僕は”ウワーッ”と飛びおきました。”なんだ、この顔を指で数回突かれたような感覚は!”とびっくりしたのです。
 こそばゆい顔を手のひらでなでながら、辺りを恐るおそる見渡しました。
「この野原に何が潜んでいるのだろう?」
 僕はじっと周りを観察しましたが、何も発見できませんでした。
”まあ、いいか”と寝袋をたたみ、その場を立ち去ることにしました。
 喉が乾き、珈琲が無性に飲みたくなり、町の自動販売機まで戻ろうと、もと来た野原道を歩き始めました。
 その途中、その道すがらでした。僕は低い灌木のてっぺんにリスが座り、辺りをキョロキョロと見渡しているのに気付いたのです。僕とリスとの距離は、”これ以上僕が近づいたら逃げてしまうな”と思える距離でした。僕は息をひそめて、”もしかしたら、こいつが顔の上を走ったのか”と思うと、なんだか嬉しくなりました。

”こいつは、きっと、木陰の俺に気付かなかったんだな。いきなり弾力のある頬の上なんか、走ってびっくりしただろうな”
”俺も驚いたが、やつだってきっとそうなんだ。リスだって、いつもの通り道にまさか人間が横たわっているなんて考えないだろうからな”

 リスはすぐにどこかへ行ってしまいました。僕はそのあとリスのいた灌木まで行って、なんとなく灌木の枝を観察しました。
「ほぉー...ほぉ。ここに...さっきまで...リスが...リスがいたんだ...」
 まるで、博物館に行って「ほー。大昔の人はこんな穴に住んでいたんだ」と感心するのと似たような心持ちで、灌木を見つめました。
 僕はこの頃、今起きた一瞬一瞬が、過去になっていくのが、なんだか切なくて仕方ありませんでした。
”今感じた感覚が、今おこった事が、過去になっていく。昔になっていく。もう、ほら今が過ぎていった。もう絶対戻ってくることはないんだ”
 と、一瞬一時が、自分にとってかけがえのないもののような気がしてならなかったんです。そして、一つひとつの出来事を、できるだけ記憶に留めようなんて思っていたんです。
 この時分は、なんでもないことでも、なんだって、自分にとっては”大切な思い出のかけら”だったんです。
 うーん。しかしながら、今では...
 今ではしょっちゅう、はずかしい失敗や勘違いが多くし、”なるべく忘れよう!忘れてしまえ!”と、逆に頻繁に思う今日この頃です(汗)。(まあ、そう思わなくても、自然に忘れっぽくなりましたが(笑))
では、このあたりで失礼いたします。







制作年月日 2007年11月21日
画用紙
ボールペン、アクリルガッシュ



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05/07 10:47 | 2007年 毎日原画シリーズ(絵)
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