会いたくても
作品No.248「PARTY PIECE」
partypiece


(絵)HEAVY SOULシリーズ

(文)1993年の旅、フラグメント(3回目)

 稚内まで戻る途中、僕の横に一台のワンボックスカーが止まりました。
「どこまで、行くの?乗せていってあげようか?」
「あっ。はい」
 条件反射で、思わず「はい」と言ってしまい、僕は車に乗せてもらうことになりました。
 車には、三人の若い男の人が乗っていました。大学生だったのかもしれません。でも、僕より年上なのは、間違いありませんでした。北海道をドライブしながら気持ちのいいところで車をとめ、ビールを飲みのみ、旅をしていると言っていました。車の後ろの方に缶ビールのケースが4箱くらいあったのを覚えています。
 運転手以外はみんな片手に缶ビールを持ち、かなり陽気でした。
 車が出発すると、男の一人が質問しました。
「歩いて旅してんの?」
「あっ。はい。まあ、うーん。はい」
「どこまで行くの?」
「うーん。まあ、どこまでって、決めてないんですが、歩けるところまで、ですか」
「かっこいいな。さすらいの旅人みたいで」
「いやー。歩くのすきなんですよ」
 そうなんです。そう言ってしまったんですね。これが。
 歩いて旅しているって言っても、まだ全部合わして15キロ歩いたかなって言うくらいのもんです。
 僕は心の中で、「あっ。僕は徒歩旅行者だったのかな。にしても徒歩旅行者っていえる程、歩いてないな。ちょっと恥ずかしい」と思っていました。
 で、話を聞いていた別の男が、新たな質問をこう切り出したんです。
「どこから?どこから歩いているの?」
 内心”ひゃー!”です。
 僕は正直に言いました。
「あのー。そ、そ、そ、宗谷岬です」
「なんだ。俺たちもさっきまでそこにいたんだよ」
「そ、そうなんですか」
 ぎこちなく返答したあと、僕は所在をなくしたような気がしてこう言いました。
「じゃあ、いろいろありがとうございました。すんませんが、そこのへんで降ろしてもらえますか」
 結局、僕が車に乗せてもらったのは、数キロでした。
 別れ際、男がこう言ってくれました。
「なんか。無理矢理乗せたみたいで、悪かったな。がんばれよ!頑張って歩けよ!」
 男達は少し酔っていて、車の中からも大声で、「がんばれー!また会おう!さらば!」なんて言ってくれました。
 何度も、”がんばれー”と言ってもらうと、自然に高揚した心持ちになりました。不思議と、”僕は歩くんだ”という意志が強固になっていったんですね。
「まあ。歩いてみるか。北海道を。歩けるところまでなんだから。どこで止めてもいいしね」
 僕が徒歩旅行者として、その気になった瞬間でした。

 こうしてノープランな旅は、徒歩で旅をするというルールをもった旅へと変わっていくのです。
 この時、まさか3000キロ歩くなんて夢にも思いません。
 ポケットに財布、リュックに寝袋。所持品はそんなものでしたから。水筒すら持っていませんでした。
 ほんと、”とほほの繰り返し。初めて来たよ、初めて知ったよの連続”の旅の幕開けでした。


制作年代 2002年
ワトソン紙
アクリルガッシュ



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05/01 10:28 | heavy soulシリーズ(絵)
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