会いたくても
27七枚の絵、七つの話 第27話
 七枚の絵、七つの話



  第 27 話



 また一つ、ありありと思い起こせば、私がハチに刺された時だ。

 八月の初め、小屋の軒にキイロスズメバチが巣を作ったことがある。巣を取り除こうとしたが、へまをやらかした。額と頬の二カ所を刺され、顔がふくらみ、熱が出て寝込んでしまったのだ。

 ベッドで腫れた顔に水をかけていると、九歳になったやつがやってきた。夏なのに防寒服をまとい、皮手袋をはめ、冬靴をはき、またその上に私の頑丈なブーツをはいている。
「今からハチと戦ってくる」
 やつは怒った調子でそう言うと、透明ガラスでできた大きな花瓶を頭の上に置き、それからすっぽりと首まで被ってみせた。目配せすると外へ出て行った。

 私は窓からやつの様子を気をつけて見守ることにした。
 やつが竹ぼうきでハチの巣をつつき、地面へ落とそうとしている。怒った数匹のハチが飛んでくると、必死で竹ぼうきを振り回し、どうにか追い払っていた。
 夏のむっとする暑さの中、やつは冬服を着て、ハチと激しく戦っている。服の中は汗でびっしょりと濡れているだろうと思った。

 やりあっている最中、やつはかなり大きな声をはり上げた。花瓶を被っているにもかかわらず、こもった声が私のいる窓際まで聞こえてくるほどだった。
 やつから目を離さないでいると、花瓶の内側が吐く息で少しずつ白くなっていくのに気付いた。
「窒息はしないだろうな?」
 私は急に不安で一杯になり外へ駆け出した。

 やつは私を目にすると、そばに走り寄り、竹ぼうきを強く振り回して、無数のハチを遠ざけた。そして被った花瓶を外し、興奮した口調でこう言ったのだ。
「おじいさんは来ないで。もう一回刺されたら死ぬかもしれない」




少年カビン


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03/15 11:35 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:2 | TB:0
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