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23七枚の絵、七つの話 第23話
 
七枚の絵、七つの話



  第 23 話


 二人で焼き芋を食べた後、晩御飯の足しに栗を拾った。そのとき、やつは栗のとげで指に傷をした。ちょろっと血がにじんだ指を親指で押さえ、やつが言った。
「僕は生きている。絵は死んでいるのかな?」
 長らく絵を燃やし続けた私への問いかけだった。息がつまった末こう言った。
「栗の実は生きていて、食べるとおいしいだろう。絵は死んでるけど燃やすときれいなんだ。そしてその時ただ一瞬生きる」



(コメント)
 実を言うと、この絵の裏は墨汁で真っ黒だった。墨汁で何十層にも塗り固められていた。
 そのため、この絵の裏の文章は十五年の刑期を終え、七枚の絵を手に入れた後に知った。
 当初「どうしてこの一枚だけ裏が真っ黒なのだろうか?」と不思議に思ったが文章のない一枚の絵としか考えていなかった。けれど、六つの文章を何度も読んでいくうちに、もしかしたら文章が塗りつぶされているかもしれないと欲望を持つようになった。
 そこで、墨に造詣が深い「古代書物保存の会」に細心の注意を払った墨の洗浄を依頼。その結果、この文章を読むことができた。裏のはじには「わたしのばか」「わたしは、なんとこたえたらいいのだ」などと、なぐり書きがあった。

 私は好奇心が勝って、老人が伏せたことまで知ってしまった。そう思うとやるせない気持ちになり、絵の裏に墨汁を再び塗り、もとどおりの真っ黒にした。

 その後、本書にこの文章を載せるべきかでおおいに迷ったあげく、載せた。

 老人よ。あなたが生きた証、少年が生きた証を、包み隠さず紹介したい。真実は表に出した方がよい時と、裏に隠した方がよい時と、場合によると言われるが、あなたの伏せた文章は載せた方がいいと思うのだ。

 私は、本書を自費出版で公の場に発表した後、逃亡生活に入る。本書から、南極生活局は私が刑期後、再び規則を破り自然保護エリアに侵入したことを知るだろう。
 二回目の違反者として逮捕されれば、重い罰則を受けることになる。月面での終身強制労働に従事させられるのだ。過酷な労働と多発する事故により、二年か三年で死ぬ。

 生きている間にやっておきたいことはやっておこう。あの世で後悔はしたくないんだ。




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03/19 11:46 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:2 | TB:0
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