会いたくても
21七枚の絵、七つの話 第21話
 七枚の絵、七つの話



  第 21 話



 今回の件は、これで終りを迎えたかった。それなのにあの猟師が、たびたび私のところに来て「マッチで描いた絵を見せてくれ」とせがむのだ。
「もう完成したんじゃないの?見せてよ。ねえ。ほら今日は山鳥がおすそわけだ」

 後日、私は本気でマッチを筆代わりに絵を描きはじめた。途方もない根気が必要であり、果てしない手やけどが待っているような気がした。

 買い物リストには、マッチが必ずあるようになった。やつはそれが嬉しくて仕方がないようだ。小遣いでマッチを買わずにすみ、かわって菓子パンでも買い、タバコ屋の娘にプレゼントするのだろう。

 マッチで描く絵はまだ完成していない。私が描くのを傍らでみている猟師は、私がマッチの火でやけどをし、うめく度にこう言う。
「いや。絵描きってつらいな。わしにはできねえよ」



(コメント) 
 文章を読み終え、絵を眺めていると、老人が少年を尾行する姿を想像し、頬がゆるんだ。

 老人が少年のずっと後ろをよたよたと歩く。時折、建物や木陰に隠れ少年の様子を観察する。
 タバコ屋で少年が娘と会話をするのを目撃すると、老人は微笑する。
 その後、老人は少年に姿を見られないよう注意しながら、村の人々に少年のことを聞いて回る。
 帰り道、少年が野原で焚火に使う枯れ枝を集めている間には、老人はこっそりと少年の荷物の所に行き「ああ、ここでマッチを燃やしてしまうのか」と思う。
 しばらくして少年が戻ってくる。老人はあわてて遠くの茂みに姿を隠す。その時、潅木の根っこに足をとられ膝を打って転んでしまう。
 老人は茂みで痛む膝をさすりながら、あたたかいまなざしで少年を見ていると、ふっと老いを感じ、苦笑してこうつぶやくのだ。
「痛い。痛い。もう歳には勝てんのう。若い時には鳥のように逃げ去ったものなのに」




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03/21 10:27 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:0 | TB:0
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