会いたくても
13七枚の絵、七つの話 第13話
 
七枚の絵、七つの話



  第 13 話



 私はその時、きこりの仕事でためた全財産を投入し、世界旅行にでかけていた。
 大型の客船に乗り、甲板で海を眺めていた。すると帆にうなぎの絵が描かれた黒船が近づいてきた。船員があわてて、私を船内にいれようとしながら「もうだめだ。私のかつらが」とぼそっと言った。私は、なんのことやらさっぱりわからなかったが、船内に入った。



 すべての乗客が船内の大ホールに集合すると、船長が現れ、みんなに言った。
「本船は、悪名高きうなぎ海賊団に目をつけられてしまいました。海賊に遭遇した場合のマニュアル『うなぎ海賊団に狙われた時』に基づき、本船はすでに白旗を船にかかげ、降伏しています。
 みなさん、本当に申し訳ありません。本船がうなぎ海賊団に抵抗することは考えられず、マニュアルに従うほかないのです」

 船長はそう言い終えると、ひと呼吸おいてから覚悟を決めた表情で、こう続けた。
「みなさん。靴を脱ぎましょう。かつらをかぶっている方は、かつらを取りましょう。船内にあるすべての靴とかつらを、うなぎ海賊団に渡してしまうのです」

 船長の話を黙って聞いていた乗客全員が一斉にざわめきだした。
 ちょっとして、新婚旅行中の若い夫婦の男の方が、船長に問いただした。
「この船はどうして戦わないんだ?せっかく新調したばかりの靴なのに」
 船長が説明した。
「この海賊団は素直に靴とかつらを渡せば、なんの危害も与えません。
今までに抵抗した客船は、すべて行方不明となっています。ですから殿方、取りましょう。かつらを」

 このとき、船長はあきらかに余計な言葉を付け足した。新婚の女が、まじまじとつれあいのひたいにある髪の生え際を見つめていた。

 乗客はひそひそと笑いながらも靴を脱ぎはじめ、かつらをかぶっているものは告白でもするかのような顏をして、かつらを頭から取った。

「訴えてやる」とか「裁判にしてやる」とか「許さんぞ。旅行会社」などと、わめいていた新婚の男もついには、顔を真っ赤にして、かつらをとった。
 新婚の女が男の頭の上にある細波のような数本の髪を確認すると、涙をためて言った。
「知っていたのよ。こっちの方が素敵じゃない」

 直後、二人はみんなの前で恥じらいもなく抱き合った。それを見ていた数人は拍手を惜しまなかった。




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03/30 10:58 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:4 | TB:0
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