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1七枚の絵、七つの話
 七枚の絵、七つの話



  第 1 話


  [序文]  八枚目の絵について



 私の名前は、トム・熊谷。四十三歳。
 元泥棒であり、画家兼詩人であり、本書の制作者である。
 出身地は南極大陸地下居住空間、ポーエグ州。地下二十三層目の都市、バタヒ市。熊谷姓が多くて有名な、どちらかと言えば田舎の部類に入る治安の良い地域だ。
 自己紹介はこれくらいにして、序文の趣旨に入ろう。



 七枚の絵はアタッシュケースほどの木箱におさめられていた。
 栗の木の下から木箱を掘り起こすと、木箱の表面は腐食が進み、黒ずんでいたが裏面は痛みがなく、木面がきれいに残っていた。
 木箱の裏に絵を描いた。巻末にその絵を載せる。
 本書の主役は七枚の絵と文章ではあるが、私は私なりに生きた証明として、八枚目の絵を本書に残したいのだ。
 「八枚目の絵だけ、段ボールを使い梱包されている 」と不思議に思う人もいるかもしれないが、気にしないでもらいたい。
 そう遠くない昔、私は自然保護エリアへ盗みの仕事で潜入すると、合い間を見つけては、趣味で落ち葉を拾っていた。
 落ち葉は北極の衛生管理された地下公園でも手に入ったが、人工光のもと紅葉し落ちたもので、私には軟弱な環境で育った大人のようにしか思えず、関心がなかった。そのため、自然保護エリアに入った際には、嬉々として本物の落ち葉を拾い集めていた。
 落ち葉は秘密裏にコレクションし、いつのまにか二千を超える数になっていた。
 描いた八枚目の絵に、集めた落ち葉の一枚を貼ってみた。私はそれが気に入り、私の絵(八枚目の絵)の印刷物すべてに、落ち葉だけはコレクションした本物を貼ることにした。
 しかし、製本所がそれをすんなりとは受け入れてくれなかった。
 製本所は、落ち葉が自然保護エリアで採取された本物だと知ると、南極衛生基本法に記されている「自然保護エリアに生殖する原始的ウィルスの人体感染 」の項目を重視し、落ち葉から、原始的ウィルスの人への感染の可能性があるとして、本物の落ち葉を貼った私の絵だけは衛生上梱包すると言い張ったのだ。
 その上、製本所は「我々は自然保護エリアで取られた落ち葉だとは全く知らなかった」という密約まで私と結ばせた。

「落ち葉がどうして人に危害を与えるのだろう?今は、自然を大切にするという名目のもと、自然との共存を捨て、自然からいかに遠ざかろうかとやっきになっている時代なのだ」

                ワシワシ暦  八二九年 十二月

 追記                                                        
 この序文は製本終了後、私の手作業により、後付けで挿入する。
 これで本書最後の付け足しを書き終え少しほっとしたが、そろそろ逃走準備を始めなければと思うと、体が小刻みに震え、私は大いに笑った。


トム・熊谷


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04/11 11:25 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:2 | TB:0
2七枚の絵、七つの話 第2話
 七枚の絵、七つの話



  第 2 話


  第1章 泥棒だった



  [1]  南極生まれ



 南極大陸移住キャンペーンチラシ(抜粋)
 
 これからは人々の生活する居住空間と、ありのままの地球の自然地帯が、完全に、完全に、分けられるべき時代に突入しました。
 過度の人口過密や、世界工場革命による自然破壊によって、我々が愛する自然はほんのわずかです。古い理想で固められた自然保護プログラムでは、とても自然破壊を食い止めることはできません。

 みなさん、そうなんです。我々は多すぎる。とにかく多すぎるのです。

 我々は、自然を蝕む癌細胞だと言ってもおかしくありません。からだを蝕んでいく癌細胞のように、我々は自然を着実に破壊しながら、無尽蔵に増え続けているのです。

 南極大陸で行っている第五次地下居住空間開発工事は、あとわずかばかりを残して完璧に進行し、多くの自然を愛する人々が南極で生活をしています。
 また、以前から進めていた南極大陸での宇宙船基地開発はすでに完成し、志のある人々が月に新しい大地を求めて旅立っています。
 月移住者は、月面のいたるところに太陽光農場を開拓し、穀物や、野菜の栽培に苦労しながらも自給自足できる環境を整えつつあります。我々のフロンティア精神は頑強なのです。
 みなさん。南極へ来ましょう。そして地球の自然治癒を見守るのです。 



 私は、生まれた時にはもう南極暮らしで、地下住居での暮らしがふつうだと思っていた。中学生になる頃、年に一度しか行われない「地球の治癒とその経過 」という、人気が高くて有名な応募制のツアー旅行に叔父が応募し、奇跡的に当選した。けれど、旅行費が高額なため叔父は旅行を断念し、私の両親の方へよかったらどうかと話を持ってきた。
 父は最初、家計簿を見ながら難しい顔をしていたが、最後には涙をためて私にこう言った。   
「おまえ行ってこい。私らが愛する地球の自然のすべてを見るんだ」

 そして、私は本当の自然を初めて知ることになった。

 ツアー旅客機の中からは、自然の美しさ・雄大さに目を奪われた。
 旅客機が最初のツアーポイントに着陸する。タラップを降りると、眼前には森が横たわっていた。当時よく散歩をしていた地下自然公園と、どこか感じが似ていた。ふだん公園を歩くのと大差ない気持ちで、大勢のツアー客と一緒に森林へ入っていった。
 しかしすぐに私を含めたみんなは、森林に対して恐怖を抱き、引き返した。私は森林を離れた後もしばらくの間、その時に感じた恐怖を払いのけられなかった。
 私はその時、管理された地下公園などにはない、ほんものの自然が持つ、圧倒的な野生を知ったのだ。



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04/10 11:24 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:0 | TB:0
3七枚の絵、七つの話 第3話
 七枚の絵、七つの話



  第 3 話

 
 旅行時、南極以外の地球上に数カ所だけ存在する特別認可居住区の村で一日を過ごすことができた。そこで偶然に立ち寄った古ぼけた喫茶店で、大昔の雑誌をペラペラとめくっていると、南極大陸移住キャンペーンチラシがはさまれてあるのを見つけた。私は旅の記念にと、ポケットにそれを差し込んだ。
 ツアールールブックに、旅行中は指定された売店でしか物を買うことはできず、どんなものだろうと決して勝手に持ち帰ってはならない、と記載されていることを知っておきながら。

 それが、実を言うと私の泥棒のはじまりだった。

 その後、盗みの技術を磨き、成人を迎えるころには自然保護エリアでの盗みを専門にする一人前の泥棒になっていた。
 通常は南極に住み、売れない画家兼詩人として世間に体裁を繕ろう。
 だが、盗みの仕事が入ると「生活費に困って出稼ぎにでる」と近所の人に言って南極を違法に外出する。そして最新の保守テクノロジーシステムで守られた自然保護エリアを縦横無人に駆け回り、依頼者の目当てのものを確保し持ち帰っていた。



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04/09 11:11 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:0 | TB:0
4七枚の絵、七つの話 第4話
 七枚の絵、七つの話



  第 4 話



  [2]  古い家屋で見つけたもの



 二十八歳になった年、泥棒を始めて以来もっとも高額な仕事に着手することになった。

 自然保護エリアに昔の人々が築いた建築物は、年々数が減っていたが、まだすくなからずあった。その建築物の部材は、ドアだろうと窓であろうと、南極に住む富豪の間では、高額な値段で取り引きがされていた。中でも、木造建築物の大黒柱はもっとも高額で、ずば抜けていた。

 そう、私は、その大黒柱を盗もうとしていた。


 
 古い木造建築の小さな平屋の家屋は、湖のほとりにあった。夜が近づき、太陽の光で反射する湖面が暗闇に紛れ込んでいくと、私は家屋周辺にはり巡らされた家屋侵入監視システムを苦労して乗り越え、屋内にはいり込むことができた。

 腰につけたフォルダから光線型のこぎりを取り出し、慎重に大黒柱を切り取っていった。大黒柱を確保してから家屋が倒壊するまでの時間、つまり脱出時間は三秒と考えていた。その三秒は、衛星写真資料館で、その家屋写真を探し出し、建築学的、構造学的に何度も検討した結果、導き出した自信のある時間だった。
 大黒柱を背のたけほど切り取り、抱える。それと同時に、一、二、三と数えながら屋外へ向かって駆け出した。ポーチに近づいた時には外の草むらに向かってダイブした。背後からは、家屋木材のひとつ一つが所在をなくし、木と木が軋む音が聞こえ、最後には大音響で家屋の倒壊する音が聞こえてくるはずだった。
 しかし、家屋は倒壊しなかった。切り取ったはずの大黒柱は大黒柱ではなかったのだ。駆け出した時点で、家屋の床下に設置された音感知センサーはふだんあり得ない異常音を感知し、データを監視中央コンピュータへ送っているだろう。

 やってはいけないミスを犯してしまった・・・。そう思うと、すぐに家屋にもどり、神経質な歩き方で屋内をうろついた。
「この家よ。倒壊してくれ」私はその言葉を何度もくりかえした。

 いつのまにか我を忘れ、ふたたび光線型のこぎりを手にしていた。ただただ、家屋が倒壊することを願って目につく柱を次から次へ切り倒していった。何本の柱を切り倒したかわからない。

 そしてついに、倒壊させた。天井が頭上に落ちてくる。天井を眺めながら一瞬、死ぬのかな?と思った。
 天井板は古く、もろくなっていた。私は身体ごと板を突き破り、気を失った。




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04/08 19:09 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:2 | TB:0
5七枚の絵、七つの話 第5話
 七枚の絵、七つの話



  第 5 話


 気付くと周りは瓦礫の山だった。幸運にも、頭上には瓦礫が三角屋根を作っていて、私は木材による圧死をまぬがれていた。
 
 もう三十分もすれば、自然維持攻撃型ロボットが大挙押し寄せてくるだろう。検挙され十五年の禁固刑に処せられるのだ。私は自暴自棄になって周りをなんとはなしに見つめた。
 すると目の前に、天井板に釘で固定された、アタッシュケースほどの大きさの木箱があるのに気付いた。木箱は天井裏に保管されていた。いや、隠されていたという方が妥当だと考えた。
 だいたいの人は保管するというより隠すという時に天井裏を使うという、自分の偏見があるからだ。貴重な宝石でも入っているのかもしれないと好奇心にかられ、木箱をあけてみた。

 中には七枚の絵が入っていた。七枚とも、50センチ×40センチくらいの紙にアクリル絵の具で描かれていた。状態はすこぶるよく、劣化も損傷も見当たらなかった。
 絵の裏側には、細かい字で文章が書かれていた。短い文章もあれば長いものもあった。
 私は、自然維持攻撃型ロボットに検挙されるまでのいくらかの時間、この絵と文章で時をまぎらわそうと、絵を眺めては裏の文章を読んでいった。
 ひととおり目を通すと、七枚の絵を木箱に戻した。木箱を抱えると、倒壊した家屋をこっそりと這い出ることにした。

 私は家屋侵入監視システムにすでに見つかり監視され、どう努力したところで、今から自然保護エリアの外に逃げおおせることはできなかった。だが、今まで学んだ泥棒の技術を駆使し、数分間だけ監視システムから姿を暗まし、どこかに木箱を隠せないかと考えた。
 結果として、木箱を近くの雑木林まで運び、栗の木の下に埋めることができた。検挙された後、運がいいことに木箱の存在は知られずにすんだ。


七枚の絵との出会い



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04/07 12:22 | 小説 七枚の絵、七つの話(絵つき小説) | CM:0 | TB:0
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